水リスクの評価
当社グループの事業活動や地域社会において、水は大切な資源の一つです。国内外の各生産拠点の水資源の利用量や排水時の水質などを把握し、自社内での利用方法の工夫や適切な排水管理だけでなく、当社製品の利用によるサプライチェーンでの貢献なども含め環境負荷の低減に取り組むとともに、持続的な事業成長のためにリスク評価を実施しています。
当社グループの生産拠点のある国における水ストレス状況について
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特定の国における水リスクを共通に評価するツールとして、世界資源研究所(World Resources Institute)が開発したAqueduct Country Rankingの評価
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指標であるBaseline Water Stress(2030年の利用可能な水資源量を予測するBAUシナリオを採用)を活用し、当社グループの生産拠点のある国の水スト
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レス状況を確認しています。
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当社グループの生産および研究拠点が立地する流域における水ストレス状況について
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生産拠点のある国の水ストレス評価に加えて、国内外の生産拠点、研究所の緯度・経度から評価し、立地する流域における水ストレス状況や各拠点の水使用量や水質、生産品目の状況からリスク評価を実施しています。
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2024年8月時点で再評価を実施したところ、水資源リスクが相対的に高い地域としてはタイの拠点があるものの、水の使用量の多い拠点ではなく、全体の約0.3%であり、リスクが中~高の地域は全体の約24%となっています。
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国内外の事業所別にリスクアセスメント評価も毎年実施しており、水リスクもさまざまなリスクのうちの一つとして認識しておりますが、当社グループ内での削減目標などの設定は特にしておりません。それ以上に当社の製品を使用いただくことで、サプライチェーンを通じて排水負荷の低減につながることを機会として捉え、事業活動に取り組んでおります。
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水資源の使用量/排水量などの推移
荒川ヨーロッパの2023年度実績は、生産活動をしていた2023年4月初旬までの実績の為、用水使用量減となっております
水資源のグラフ
水資源の保全
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製造工程で発生する汚水(洗い水など)は、排水処理施設で浄化します。化学的酸素要求量(COD)やけん濁物質量(SS)などで自主目標を設定して
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監視し、規制値を十分下回っていることを確認してから工場外へ放流しています。
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✓工場廃水発生量削減への取り組み
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当社グループでは製品の製造時に使用する水だけでなく、設備の洗浄にも水が必要となりますが、多くの水やエネルギーを使用し、多量の廃水が発生
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していました。安全性や製品品質を十分に確認して洗浄方法を見直したところ、年間使用水量約1,000トン、機器運転に掛かる年間電力使用量約
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6,000kWhもの大幅な削減ができました。また洗浄回数を減らすこともでき、オペレーターの作業量軽減などの生産性の向上にもつながりました。
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✓システム管理による廃水処理の効率化
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廃水処理では製造各プラントで発生する廃水を集めて処理していますが、集まった廃水の状態は変化するため、常にその対応に苦慮していました。
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特に処理水の水質によっては放流できず工場の生産停止にもつながることから、これまで改善を続けてきました。 廃水の水質 に合わせて凝集剤(硫
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酸バンド)の注入量を自動で 増減させるS.SensingCSシステムを導入しました。 導入においては5ヵ月間のテスト期間を設け、水質変化への追随性と
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有効性を見極めました。結果、廃水処理状態は安定し、凝集剤量は従来比削減できたことで汚泥発生量も削減する(△10%)ことができました。
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今後も、廃水処理の安定効率化・廃棄 物削減を推進し、環境負荷低減に努めていきます。
サプライチェーンでの排水負荷低減
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当社グループでは製紙用薬品の事業を国内だけでなく、海外展開をしており、製品の製造時に水も多く使用しています。主な用途である段ボールは
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リサイクル可能な包装材ですが、リサイクルを繰り返すことでパルプ繊維自体の強度低下を招くため、段ボール原紙の強度を補強する薬品として紙力
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増強剤が広く使われています。これまでも時代のニーズに応え、日進月歩で技術開発をおこない、日本の古紙リサイクルを下支えしてまいりました。
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東南アジアなど海外の一部の地域では未だに排水負荷が大きい澱粉が、段ボール原紙生産時に使われています。当社製品は少量の添加で高い歩留まり
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効果が得られ、排水負荷を抑えることができます。日本の古紙リサイクルを支えるビジネスモデルを海外展開し、普及促進に貢献してまいります。
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最近では、従来品と同等の性能を維持したまま、製品濃度を高めることでCO₂削減効果だけでなく、水の使用量を減らした製品開発もおこなってお
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り、サプライチェーンを通じてさらなる改善に向けた取り組みにも注力しております。