新着情報

チャン塗に関する近世建築塗装史に当社が協力しました

2023年11月30日

 出雲大社本殿をはじめ数多くの国宝や重要文化財の修復を手掛けてこられた文化財建造物修理技術者である今井成享しげゆき氏による「チャン塗と唐油彩色とうゆさいしき-近世建築塗装史の研究-」が令和5年(2023)10月に発刊(非売品)されました。

 同氏は江戸時代の建築塗装であるチャン塗の研究を目的に、2018年に当社の歴史館を訪問され、当社が持っている松脂に関する基本情報や関連資料などをご提供させていただいた経緯もあり、本書には「荒川林産百年史(1977年、社史)」や、過去に当社が発行に関わった「天然樹脂辞典(1951年)」、「天然樹脂 テレビン油・トール油 (1965年、W.サンダーマン著 荒川守正訳)」の内容が多く引用されています。

 本書が後世の文化財建造物の修理技術者、建築史研究者などに活用され、文化財建造物保存に寄与するチャン塗の技術の伝承に関する貴重な資料として寄贈いただき、当社の歴史館でも所蔵しております。

 チャンとは、松脂と溶剤の植物油とを合わせたもので、船具の防水・防腐剤として始まり、語源は樹脂を意味するタイ語Chanだとされています。チャンぬりとは、主材料を油、乾燥剤、松脂、顔料とする油性塗料で、赤色(弁柄、丹など)と黒色(松煙墨)の無地の塗装が一般的で、顔料を加えることで艶のある建築塗装として応用されるようになりました。江戸時代においては社寺建築が中心的な塗装対象でしたが、明治以降、欧米の影響を受けペンキ塗の普及により衰退し、大正末期には塗装業界での規格作成の段階で、「チャン」の語が途絶え、「ロジン」の語が普遍化するきっかけとなったとされています。